マギ

Anime Japan2016

&大高忍/小学館・マギⅡ製作委員会・MBS

SPECIAL

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アニメで意識したことと、演出の話

『マギ シンドバッドの冒険』をアニメ化するに当たって特に意識したことはなんですか。

宮尾
やっぱりキャラクターですね。「シンドバッド」というキャラクター在りきの原作ですから、まずどうアプローチしたら良いかを意識しました。また『シンドバッドの冒険』は国同士の力関係であったり、政治的な動きがあったりっていうのが本編の『マギ』と共通している部分です。この重厚で作品の奥ゆきとなってる部分を踏まえながら物語を再構築しています。今回映像化される『バアル攻略編』で言うと、ドラマの最も熱い部分として、シンドバッドとドラグルが最後にガチンコでぶつかるエピソードがストーリーの山に来るならば、そこまでの過程をどれだけ大事にして世界観を描けるかが重要だと考えてます。

それは熱い展開になりそうですね

宮尾
この二人のガチンコ勝負というのは剣や魔法が使える世界にあってあえて「素手」でやりあう訳ですから、二人の心情も含めての殴り合いの部分をちゃんと成立させることができるのか?そう考えると「熱い」けど結構「緻密な計算」が必要なんです。
岸本
ぼくにとって、『シンドバッドの冒険』は初めてのファンタジー作品なんです。初仕事の『うさぎドロップ』、次に『銀の匙』、そして『ハイキュー!!』と、すべて日常を舞台にした作品だったので、今回この作品の脚本を任せていただいて、ワクワクしながら取り組みました。

初のファンタジーですか。それはすごくぶっ飛んだものになりそうですね。

岸本
もちろん、魔法ありドラゴンありと道具立てはファンタジックで壮大ですが、ドラマは結局「登場人物たちが、どう生きるか」に尽きます。これは日常ものもファンタジーもなんら変わりません。今回の「バアル攻略編」では、敵役のドラグルを掘り下げて脚本を書きました。権威ある家の末子に生まれ、軍国主義に凝り固まったドラグルが、シンドバッドに出会って変化しはじめ、やがてシンドバッドに認められるまでに成長する過程を丹念に描写したつもりです。

あの姿になる前はどんなだったのか、どう動くのか。原作ファンも楽しみにしていると思います。

岸本
彼がカッコよく非情な男として登場し、そして心がポキっと折れる過程を楽しんでください(笑)。監督がすごくうまく盛り上げてくれていますから。あとは巨竜と戦うシーンは見ものです。
宮尾
映像でのキャラクタ−描写映像で一番こだわるべきは『距離感』だと考えてます。それはこれまで手がけてきた『イナズマイレブン』でも同じでしたが関係性が変化して行くの場合も全て『距離感』がうまく描けるがで決まります。また、映像が得意とする特性を生かすという部分では、お約束であるアクションの見せ場として、巨大なものをシンドバッドがどう倒していくのかに力を入れています。普通の人間の想像を超えた「どうしたらそんなことが思いつくのだろう」という理屈ではない彼の持っているスケールの大きさみたいなもので乗り越えさせてます。映像でしか描けない仕掛けの部分は原作にはな要素を結構盛り込んでいますよ!縦横無尽に空間を使って倒すまでの過程を見応えがあるようできてると思います。
岸本
宮尾監督と初めて組ませていただいて、シナリオとして勉強になったのが回想の使い方です。単に何かを説明するためじゃなくて、ドラマの盛り上げに回想を最大限活用する手法はとても勉強になりました。これは使える!と思って、すぐに他の作品で活用させていただきました(笑)。良くも悪くも映像は漫画よりも受け手を引っ張る力が強いので、かなり大胆な回想の使い方をしてもちゃんと通じてしまうんですね。前編にでてくるドラグルとセレンディーネの会話部分なんて、すごくパンチが効いています。
宮尾
回想ですか。「このキャラクターの感じをもっと出したい」とか、「見ている人にもっと正確に伝えるにはこうしたらいいのかな」とか、「ここでちょっと印象付けておきたい」とか、製作サイドの意図があって。そこから「回想は一気に見せない方がいいよ」とか、「のやり方の方がハマる」とかを考えるんですよ。最終的にファンのみんなにちゃんと届くことを考えて、提案していくだけなのですけどね。気をまわして頑張って作った分、悪い結果にはならないのです。まあ、あまり作り込みすぎて、一歩間違えると伝えたいことが埋もれちゃう場合もあります。映像作りはせっかくのいいアイディアでも、本来やりたいことがはみ出てしまったりとか、外れてしまったりということが簡単に起こりやすい。そういったところを脱線しないように、これくらい伝えたいなあという部分は、ちゃんと思った通りにまとめていく。そうすると、見てくれた人もこっちの意図を受け取ってくれます。キャラクターのことだったり、物語で感動したり、絵や音で気分が高揚したりとか、なるべく正確に伝えたいじゃないですか。だから、当たり前のことなんですけど、当たり前にこだわったという感じですかね。それが僕の演出的なこだわりの一つです。
宮尾佳和 (BARN STORM) プロフィール
丁寧なキャラクター描写と激しいアクションに定評があるアニメーション監督。
監督作である「イナズマイレブン」では企画立案から深く関わっている。
岸本 卓 プロフィール
「サイゾー」編集部、スタジオジブリ勤務を経て脚本家になった異色の遍歴の持ち主。
アニメ「銀の匙」のシリーズ構成・脚本をてがけている。

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